スカイリム行商記:第31話 水面下の情報戦
Category: ろーるぷれい日記
2016年になっても全然更新できてないじゃないかっ!
というわけでオフ会前に急いで作りました
今後も頑張って継続していこうと思います 生暖かく見守ってください

夕焼けがスカイリムの空を紅くする頃、ここ、ホワイトランの監視所で一人の男が遠くの景色を眺めながら立ちすくんでいた
なにやら考え事をしている様子だ
男の右手には剣が握られており、近くには夕日のように赤い血潮を体から噴出しながら倒れている者の姿もあった
元々ここは戦に備えてドラゴンズリーチが作らせた場所だが、長い間山賊に占拠され続けていた
内戦の影響で討伐隊を向かわせることもできず、周辺の住民は略奪による被害に長年苦しめ続けられたのだが、今日この地につかの間の平和が訪れようとしてしていた
ボハン「もうすぐ日が沈むな」
勿論、今になって山賊が退治されるようになったことには理由はある
ホワイトランの一大プロジェクトである黒檀鉱山の開発
これを成し遂げるためには周辺の治安を守る必要がある
ある女から数箇所の山賊の拠点制圧を頼まれたボハンはため息混じりにそう呟いた
本来なら危険な依頼を一度にいくつも引き受けない彼だが、今回ばかりは事情が違う

リコリス「おっ、なんとか日没までには片付いたな 早く帰ろうぜ」
ボハンの頭上から聞き慣れた声が響いた
どうやら向こうも片付いたようだ
ボハンは相棒の元へ歩み寄った
彼女は自身の同じ大きさの大剣を軽々と振り回し、その刃に付着した血を拭っていた

ボハン「終わったか、最近は荒事が続いていたがようやく一息つける」
リコリス「ここの周りもずいぶん安全になったな これでうまくいくのか?」
ボハン「どうだかな 後は”アイツ”がどれだけうまくやるかだ そこは信じるしかない」
ボハンとリコリス
彼らはリバーウッドの宿屋を経営する腕利きの賞金稼ぎだ
山賊退治など星の数ほどこなしている
戦利品を手早く回収すると、2人は監視所から早足に立ち去った

リバーウッドまでの家路を急ぐ2人
日が沈めば、また厄介な連中に襲われる可能性は高くなる
どれだけ山賊の拠点を潰そうと、今のスカイリムには完全な平穏が訪れることはない
ボハンはリコリスの武勇伝を聞き流しつつ、今後の事を考えていた
リコリス「それでさ、グワーッってそいつが襲ってきたところをシュビビーンって避けてさ…ボハン聞いてる?」
ボハン「…ん?あぁ、聞いているさ それでいいんじゃないか?」
リコリス「…聞いてなかっただろ」
ボハン「…」

ボハンは自分から話題を振ることにした
つい先ほどまで自分が悩んでいた内容だ
話を聞いていなかったことを誤魔化したかったのが半分、自分で考えても答えが出なかったのがもう半分の理由であった
ボハン「なぁリコ、怒ってるか? アイツと組んで金を儲けようなんて言い出したことに」
リコリス「え?そりゃ最初はびっくりしたけど、まぁボハンが必要だと思うならやるべきことだったんじゃないかな」
ボハン「そう思うか」
リコリス「でも、なんでいきなり金儲けしようなんて話になったんだ?別に今までお金に困ってたわけでもないじゃないか」
ボハン「…」
ボハンは今までリコリスには話していなかった本心を口した
ボハン「スカイリムは不安定な土地だ ドラゴンといい内戦といい、平和を脅かす脅威は数えきれない 今のリバーウッドは平穏そのものだが、そんな日もいつまで続くのか全くわからない状況だ」
リコリス「…うーん、つまり?」
ボハン「いざというときの蓄えは必要だと思うんだ 今回の件はそれを手に入れるチャンスだと俺は感じている だから、少々危険な仕事でも請ける」
ボハンはリコリスの顔を覗き見た
納得したような、そうでないような微妙な表情であった
そして彼女はボハンと同じ心配を口にした
リコリス「うーん、そんなにうまくいくかな?」
ボハン「リコはアイツを信用できないか?」
リコリス「チェシャは…友達だとは思うけど、正直頼りないしなぁ、子供っぽいし でも、俺はボハンを信じるよ」
ボハン「…そうか」
2人は口を閉じるとそのまま街道を歩いていくのであった

一方、ここはホワイトランから貸し与えられたチェシャの事務所の一室
なにやらブツブツと文句をたれ続けるチェシャとそれを宥め続けるアーセランの姿があった

チェシャ「んも~こんな予算で新しく街なんて建てられるわけないじゃん!おじちゃんたちケチりすぎだよ!」
アーセラン「これでもスカイリムの最大都市なんだから良い方だと思うぜ ま、確かにこんな予算じゃどうにもならんが…」
チェシャ「それに物資を買い集めるのに人が足りないよぉ…こんなんじゃ全然開発なんて進まないよぉ」
アーセラン「それに関しては『なんでも集めてやる!』ってみんなの前で豪語しちまったお前が悪いんじゃねえのか?いくらチャンスだったとはいえ、あんなハッタリかますやつがいるかよ」
チェシャ「うわぁぁん!どーしよぉぉぉ!」
自身の軽率さが招いたツケに苦しめられるチェシャ
見切り発車で街の事業に介入するなど正気の人間がやることではない
帝国の商人は皆こんなやつなのだろうかと、巻き込まれたアーセランは呆れながら思っていた

アーセラン「ま、とりあえず俺のやれることはやってるやるよ ファルクリースから食料の調達をするんだろ?俺が見たところ、あそこの鹿肉は中々だな」
ウッドエルフは肉類以外のものを口に入れたりはしない
アーセランは故郷でも精肉の売買を専門としていた スカイリムでもその知識を使って商売を行うつもりだったのだ

チェシャ「おじちゃん頼むよ~なんとか予算に収まる条件で買って来て~」
アーセラン「まだおじちゃんって歳じゃねえよ!それに終わった後の報酬はちゃんと用意しとけよ」
チェシャ「はーい♪じゃ、あとはお願いね~」
アーセランが救いの手を伸ばしてやった途端にこの笑顔である
泣き言を漏らしてはいるが、内心はこの状況を楽しんでいるに違いない
アーセランは自分の勤めを果たすため、事務所を後にした

アーセラン「(まだだ…まだこいつの傍を離れる時じゃない…こいつなら必ずカネを生むはず…それも巨額の…そうなったときがチャンスだ)」
その内なる反逆の意志を気取られないように細心の注意を払うアーセランであった

そしてその夜…







ジョディ「ま、今わかってるのはこんなところね」
チェシャ「ふーん、ノルドでも商売上手な人っているんだね~」
ジョディ「あの女には他にも黒い噂が絶えないみたい アンタと一緒ね」
チェシャ「チェシャは悪いことなんかしてないもん!お金稼いでるだけだもん!」
ジョディ「…本気で言ってるのが性質が悪いわね で、どうする?あの商人 いつもみたいに殺す?」
チェシャ「ううん、お友達になってみようかなーってチェシャ思ってるよ」

深夜にひっそりと行われる2人の会話
それに音もなく忍び寄り、耳を傾ける者がいた
扉一枚を挟んだ先から聞こえてくる声を細心の注意を払いつつ聞き取っているのはアオイであった
バルグルーフはチェシャ・マリティーナを信用し、この事業をある程度放任して任せてはいるが
それを良く思わない者たちもドラゴンズリーチにはいる
アオイは彼らからの指令でチェシャの監視を行うことになったのだ
アオイ「(早速、怪しい会話が聞こえてきたわけだけど…あの女ってイソルダさんのことかな?)」
どうやらホワイトランの市内で情報を集めているようだ
この様子だと放たれた間諜はジョディだけではない可能性もある
チェシャ・マリティーナが誰とつながりを持っているかということは今後も詳しく調べる必要があるだろう
アオイがそう思ってこの場を静かに去ろうとしたその時…

ジョディ「ところで、余計なヤツが1人入り込んでるわよ?」
アオイ「(やばっ…バレた!?)」
チェシャ「え、本当?殺っちゃえ殺っちゃえ!」
すると抜刀する金属音が部屋から聞こえたかと思うと
次の瞬間には”男”の悲鳴が屋敷中に響いていた
アオイは足早に部屋から離れると、そのまま事務所を抜け出してドラゴンズリーチへと急いだ
アオイ「私たち以外があの子を見張ってるなんて…一体誰が…」

凄惨な光景と化した寝室でも淡々と会話は続いていた
ジョディ「殺しちゃってよかったの?誰の差し金かとか聞き出せたかもしれないのに」
チェシャ「まーまーいいじゃん なんか手紙とか証拠になりそうなもの持ってるかもしれないし、見知らぬ誰かさんへの挨拶代わりだよ~」
ジョディ「何が狙いだったのかしら…ここにあるカネか、鉱山の利権か…それともアンタの命か」
チェシャ「うーん、まぁなんでもいいや それより…」
チェシャは横たわった男の死体を見下ろしながら呟いた

チェシャ「この人とはいいお友達になれそうだね~♪」
次回、商人たちは同盟を組む
お楽しみに~
スペシャルサンクス
アーセランさん(Kuromimi様)
アオイさん(くのいち好き様)
リコリスさん(lycoris様)
ボハンさん
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スカイリム行商記:第29話 敵も味方もなく
Category: ろーるぷれい日記
うおおおおおお 久々の更新ですうううううううう
皆様、本当にお待たせしました~、失踪したなと思われた方もいたでしょうが、私は元気です
NMMの突然のアップデート…容赦のないMODデータの消滅…その影響から生じたのであろう様々な不具合…
思い出したくもない出来事でしたが、ツールをMOに変えて再出発です
作者も物語の細かい部分を忘れてしまったので、矛盾が生じることがあるかもですが できればそうならないよう頑張っていきますので今後もよろしくお願いします
再構築作業時、応援のメッセージを多数頂きました 本当にありがとうございました

降霜の月に入り、今年も厳しい冬が訪れるであろうスカイリム
ここ、ソリチュードのブルーパレスでは首長の元にとある客が姿を見せていた
全身を鎧に固めた帝国の兵士と黒いドレスを着た女であった

首長であるエリシフは来客を丁重にもてなした
首長エリシフ「…では、貴女が近頃領内で噂の商人チェシャなのですね 私よりも歳が下だったとは思いませんでしたわ」
チェシャ「お、お初にお目にかかります首長」
首長エリシフ「貴女の活躍は宮殿にいても耳に入ってきますわ なんでもホワイトラン、ファルクリース、ソリチュードで大規模な取引を何度も行っているとか。しかも、ドラゴン退治や山賊の掃討にも協力している勇敢な市民だそうではありませんか」
首長は笑顔を浮かべてそう言った ソリチュード港の周辺を荒らしまわる海賊や山賊を始末する手間が省けたからだ
目の上のたんこぶが消えてくれたのだから上機嫌にもなるだろう

チェシャ「一市民として、と、当然のことをしたまでです。首長」
エリシフ「なんと頼もしい言葉でしょう ソリチュードは貴女のような人物を歓迎します。今後も街の安全のために力を貸していただけるかしら」
チェシャ「勿論…と言いたいところですが、ドール城の将軍からは『城壁の外へは出るな』と」
エリシフ「まぁ、あのテュリウス将軍がそんなことを」
チェシャ「はい、おかげでここへやってきてからというものの満足に商売を行うことさえ叶いません。もう少し自由であれば街をより豊かにする自信もあるのですが…」
チェシャは悲しげな表情を浮かべてチラリと首長の顔を覗き見た

ベアトリクスはそんなチェシャと首長の会話を後ろでただ黙って聞いていた
ベアトリクス「(好き勝手にやってるくせによく言ったものだわ)」
城門の見張りの兵士、牢獄の看守、鍛冶屋の主人、仕立て屋の姉妹、酒場の店主と彼女が知っているだけでもチェシャが買収した人物は山ほどいる
勝手に城壁を抜け出して、外から持ち込んだ”荷物”を街中に隠しておくなど造作もないことだろう
衛兵の噂では、砦で捕まえた山賊を牢獄へ閉じ込め、その後外へと連れ出した何者かがいるという情報もある
数日前にブラックブラッド略奪団の拠点が壊滅したとの情報を受けて、帝国軍がその場へと急行したが、既に積荷や人質は誰かに持ち去られた後であった
そんなことをしでかす人物は目の前の少女以外ありえないと彼女は確信していた
しかも、ベアトリクスが黙っているのを良いことに、今度はエリシフを利用して堂々と街の外を歩くつもりだ

エリシフ「それは大変窮屈な日々を過ごしてきたことでしょうね。将軍には私から貴女を自由に行動させるよう伝えておきましょう。」
チェシャ「わーい…じゃなかったっ ありがとうございます首長!」
いつもの調子が表に出てしまうのをなんとか隠そうとするチェシャであった
ベアトリクスの考えは殆どが核心を突いていた。チェシャは軍を出し抜きながら着々と準備を進め、ようやく正式な許可を取り付けたのだ

この日のために仕立て屋に作らせたドレスを脱ぎ捨て宿屋の階段をかけ上がるチェシャ
ここは毎度おなじみウィンキングスキーヴァーの一室 チェシャの今の仕事場である
扉を開けると2人の同居人がチェシャを出迎えた
チェシャ「ただいまー!」

ジョディ「遅かったわね 首長との話は上手くいった?」
チェシャ「うん!それで、”積荷”は?」
ジョディ「言われたとおり、業者に小銭を握らせて外へ運び出したわ」
チェシャ「やった~、それじゃあ明日には出発だね~ しょーぐんさんにばれちゃう前に売り捌かないと」
ジョディ「原価0の帝国の物資ね…いくら儲かるかしら」

チェシャは机に座る男に視線を向ける
チェシャ「で、どう?おじちゃん 帳簿の転記できそう?」
声をかけられ、背中をびくつかせるアーセラン
彼は海賊のアジトで捕虜になっていたところに現れたチェシャに助けられ、秘書のような仕事を任されていた
本来なら口封じのために殺されるところであったが、彼が「会計も交渉も、商人としてのスキルはなんでもある だから助けてくれ」と懇願したのだ。実際、彼はヴァレンウッドで肉を売る商人であった
命拾いしたアーセランだが、再び窮地へと追い込まれていた

アーセラン「あ、ああ、仕組みは大体わかった。これならなんとかできそう…だ…」
会計の知識に自信がなかったわけではない、しかし、チェシャから渡された帳簿は彼の知っているものとは大きく異なっていたのだ
アーセラン「(シロディールで見た帝国人もこんなものは持ってなかった…こいつ一体どこの商人なんだ…?)」
商人として興味深い代物であったが、じっくりと考察している時間は彼にはない 今すぐにこの帳簿の謎を解明し、与えられた仕事を果たさねばならないのだ
チェシャ「よかった~、じゃあ明日までにお願いね~」
アーセラン「お、おう まかしとけ (クソッ、少し時間をくれというべきだったか…しかし、”使えない”と思われたらその場で撃たれるかもしれない…こいつはそういうヤツだ…)」

アーセラン「(とにかく…やるしかねえ… 期限は明日まで、まだ時間は残ってる!)」
机に対して正面に向き合ったアーセラン 彼は文字通り命を賭けて事務仕事に勤しむのであった

チェシャ「おじちゃんが商人さんで助かったよ~ チェシャ、こっちに来てから毎日一人で作業してたんだよ~」
ジョディ「無駄に買い物するから書くことが増えるんじゃないの」
チェシャ「ジョディさんも勉強してくれたらもっと助かるのにな~」
ジョディ「なんでそうなるのよ」


ジョディ「大体ね、私はアンタの部下になる気はないし、これ以上無理に付き合う気もないの 積荷を売り捌いて儲け分を貰うまでの関係だからね」
チェシャ「チェシャ、働かない人にお給料なんかあげないもん!」
ジョディ「やることはちゃんとやってるでしょ!私がいなかったらあの”積荷”だって安全な場所に隠せなかったのよ?それに、アンタの指示で何人ぶち殺してきたと思ってんのよ」
チェシャ「お金の管理の方がもっと大事だもん!!」
アーセラン「(うるせええええええええ)」

ジョディ「じゃあ、あのエルフみたいなやつらをたくさん雇うことね」
チェシャ「いつかはそうするもん! そうなったらジョディさんなんかクビにしちゃうもんね~」
ジョディ「その前にこっちから辞めてやるわよ いつ気まぐれに殺されるかわかったもんじゃないわ」
チェシャ「チェシャは気まぐれで人を撃ったりしないもん!撃つのは邪魔な人と使えない人だけだもん!」
アーセラン「(あ、やっぱり使えないと思われたら殺されるのか…)」
ジョディとアーセランは同時にため息を漏らしたが、彼らの不安は別々のところにあるのであった

騒がしい宿屋の一室とは反対に、ドール城の会議室には静かな時間が流れていた
ガシャンという金属音と共に大柄な女が将軍の下へと歩み寄る
ベアトリクス「話は終わったわ」
テュリウス将軍「うむ、どうだったかね」
ベアトリクス「首長はチェシャ・マリティーナの市民としての活躍に感動、期待されている様子だったわ 彼女を自由に行動させるように、と」
彼女は宮殿での会話をありのまま報告した
それに対して将軍は顔をしかめる
テュリウス「…やはりか」
ベアトリクス「彼女を外に出すのは不安?」
テュリウス「今のところは帝国に害する行動はしていないが…危険ではある しかし、首長の意思は尊重する 我々としても小娘一人をいつまでも監視し続けられるほど暇ではないからな」
特使「ウルフリックが再び動き出している しばらく大人しくしていたが、どうやら休憩は終わりのようだ」

テュリウス「君も明日には部隊を率いて出発してもらうことになるだろう 準備してくれ」
ベアトリクス「わかったわ その前に一ついいかしら?将軍」
テュリウス「なんだね?」
ベアトリクス「彼女の監視は引き続き、続けた方がいいわ」
その言葉を聞いて、将軍は意表を突かれたといった顔になった

テュリウス「君はあの娘を贔屓していたんじゃなかったのか?」
ベアトリクス「少なくとも、帝国万歳としかしゃべれないここの兵士よりは気に入っていたつもりよ しかし、彼女はこの内戦にもきっと介入してくる」
テュリウス「なるほど、我々に有利になるように働きかけるなら利用するまでだが、もし泥沼に引きずり込む気であれば…」
ベアトリクス「私にとって不利益な事態を引き起こすようであれば容赦無く斬る だから、引き続き見張っていて欲しい」
将軍は傍に立っていた特使と顔を見合わせ、少し考えてから口を開いた
テュリウス「わかった 彼女が君の剣の錆にならないことを祈ろう」

場所は変わり、ここはホワイトラン
ドラゴンズブリッジではここ数日銀色の鎧を着込んだ兵士が頻繁に出入りしていた
対ドラゴン部隊に配属された度葉琴とテスラである
彼女たちはその部隊名通り、ドラゴンの討伐が主な任務であるが、目撃情報がない今は雑用部隊として執政や首長の”お使い”に使われてしまっているのであった
そんなわけで、今日も執政のプロベンタスの仕事に付き合わされる2人は、不満をこぼしつつも報告を行った

度葉琴「チェシャちゃんはファルクリースで商売をした後、帝国軍の人とソリチュードへ向かったそうです」
テスラ「山賊から砦を取り返したり、海賊をやっつけたりしてるんだって 今の私たちより真面目に仕事してるよね」
プロベンタス「ふむ、やはり帝国についたか…しかし、帝国側としか取引をしないというタイプでもないらしい…いずれはホワイトランに戻ってくるはずだ」
彼は資料を片手にブツブツと呟きながら椅子に腰掛けた
チェシャの行動を記録したものであった

2人は前々から思っていた疑問を彼に呈した
テスラ「プロベンタスさん、ホワイトランにたくさんモノやお金が入ってくるように商人さんを呼び寄せてるのはわかるんだけど、どうして最近はチェシャちゃんのことばかり調べてるの?」
それを聞いた執政は呆れたといった表情を浮かべながら口を開いた
プロベンタス「お前たちは彼女が何者かも知らずに今まで調べてたのか…いいか?マリティーナって言えばシロディールでは有名な商人の家系だ 彼女をホワイトランが囲い込めばチェシャ・マリティーナだけじゃない、奴らとつながりを持った帝国商人共が街にやってくるってわけさ 他の奴らを追いかけるよりもお得なんだよ」


二人は驚愕の表情を浮かべた
度葉琴「えぇ~!じゃあ、チェシャちゃんはお金持ちの家のお嬢様だったんですか!?」
テスラ「そんな子が一人で旅してたんだ…確かにお金はたくさんあるって言ってたけど…」
プロベンタス「そんなわけで彼女には是非ともこの街を商売の拠点にしてもらいたいが、少し目を放した隙に出て行ったからな。どこにいるかがわからなければ囲い込みも糞も無い。だから行方を追いかけていたわけだ」
テスラ「なるほど、チェシャちゃんじゃなくてそのマリティーナっていうお家の力がすごいんだ」
プロベンタス「インペリアル式簿記や為替手形、海上保険、共同出資、株式 これらは皆この一族が提案、発明したものだ 私も若い頃は彼らの本を読んで勉強したものだ(結局難しくてよくわかんなかったけどな」
度葉琴「???…よくわからないけどすごいですね」

プロベンタス「さぁ、授業は終わりだ。ホワイトランが彼女を上手く利用するために、引き続き行方を追ってくれ 例の計画も順調そうだしな」
テスラ「…?例の計画??」
プロベンタス「…全く、最近兵士や炭鉱夫が忙しそうにしてるのを見てないのか」
テスラ「あぁ、確かに」
プロベンタス「領内で新しい鉱山が見つかったんだよ 今はその調査中だ そろそろ報告が上がってくるだろう…」
彼が仕事に戻ろうとしたときであった
何者かが階段を駆け上がる音が聞こえたかと思うと、いつの間にか3人の傍に佇んでいた
皆の視線がそこへ集まる

アオイ「報告~、鉱山の調査結果が出たよ」
プロベンタス「待ってたぞ、中身はなんだ 鉄か?銀か?それともただの石ころか?」
若干興奮した様子で彼は尋ねた 彼にとっては緊張の一瞬であったことだろう
アオイ「それがね、聞いてビックリ」

アオイ「黒檀が出たんだってさ」
プロベンタス「な、ナニィィィィィ!!!!」
次回、ホワイトランで鉱山開発
商人はこの利権争いに参入できるのか?
スペシャルサンクス
アーセランさん(Kuromimi様)
ベアトリクスさん(廃人a様)
テスラさん(RoundRovin様)
度葉琴さん(みかんジュース様)
アオイさん(くのいち好き様)
皆様、本当にお待たせしました~、失踪したなと思われた方もいたでしょうが、私は元気です
NMMの突然のアップデート…容赦のないMODデータの消滅…その影響から生じたのであろう様々な不具合…
思い出したくもない出来事でしたが、ツールをMOに変えて再出発です
作者も物語の細かい部分を忘れてしまったので、矛盾が生じることがあるかもですが できればそうならないよう頑張っていきますので今後もよろしくお願いします
再構築作業時、応援のメッセージを多数頂きました 本当にありがとうございました

降霜の月に入り、今年も厳しい冬が訪れるであろうスカイリム
ここ、ソリチュードのブルーパレスでは首長の元にとある客が姿を見せていた
全身を鎧に固めた帝国の兵士と黒いドレスを着た女であった

首長であるエリシフは来客を丁重にもてなした
首長エリシフ「…では、貴女が近頃領内で噂の商人チェシャなのですね 私よりも歳が下だったとは思いませんでしたわ」
チェシャ「お、お初にお目にかかります首長」
首長エリシフ「貴女の活躍は宮殿にいても耳に入ってきますわ なんでもホワイトラン、ファルクリース、ソリチュードで大規模な取引を何度も行っているとか。しかも、ドラゴン退治や山賊の掃討にも協力している勇敢な市民だそうではありませんか」
首長は笑顔を浮かべてそう言った ソリチュード港の周辺を荒らしまわる海賊や山賊を始末する手間が省けたからだ
目の上のたんこぶが消えてくれたのだから上機嫌にもなるだろう

チェシャ「一市民として、と、当然のことをしたまでです。首長」
エリシフ「なんと頼もしい言葉でしょう ソリチュードは貴女のような人物を歓迎します。今後も街の安全のために力を貸していただけるかしら」
チェシャ「勿論…と言いたいところですが、ドール城の将軍からは『城壁の外へは出るな』と」
エリシフ「まぁ、あのテュリウス将軍がそんなことを」
チェシャ「はい、おかげでここへやってきてからというものの満足に商売を行うことさえ叶いません。もう少し自由であれば街をより豊かにする自信もあるのですが…」
チェシャは悲しげな表情を浮かべてチラリと首長の顔を覗き見た

ベアトリクスはそんなチェシャと首長の会話を後ろでただ黙って聞いていた
ベアトリクス「(好き勝手にやってるくせによく言ったものだわ)」
城門の見張りの兵士、牢獄の看守、鍛冶屋の主人、仕立て屋の姉妹、酒場の店主と彼女が知っているだけでもチェシャが買収した人物は山ほどいる
勝手に城壁を抜け出して、外から持ち込んだ”荷物”を街中に隠しておくなど造作もないことだろう
衛兵の噂では、砦で捕まえた山賊を牢獄へ閉じ込め、その後外へと連れ出した何者かがいるという情報もある
数日前にブラックブラッド略奪団の拠点が壊滅したとの情報を受けて、帝国軍がその場へと急行したが、既に積荷や人質は誰かに持ち去られた後であった
そんなことをしでかす人物は目の前の少女以外ありえないと彼女は確信していた
しかも、ベアトリクスが黙っているのを良いことに、今度はエリシフを利用して堂々と街の外を歩くつもりだ

エリシフ「それは大変窮屈な日々を過ごしてきたことでしょうね。将軍には私から貴女を自由に行動させるよう伝えておきましょう。」
チェシャ「わーい…じゃなかったっ ありがとうございます首長!」
いつもの調子が表に出てしまうのをなんとか隠そうとするチェシャであった
ベアトリクスの考えは殆どが核心を突いていた。チェシャは軍を出し抜きながら着々と準備を進め、ようやく正式な許可を取り付けたのだ

この日のために仕立て屋に作らせたドレスを脱ぎ捨て宿屋の階段をかけ上がるチェシャ
ここは毎度おなじみウィンキングスキーヴァーの一室 チェシャの今の仕事場である
扉を開けると2人の同居人がチェシャを出迎えた
チェシャ「ただいまー!」

ジョディ「遅かったわね 首長との話は上手くいった?」
チェシャ「うん!それで、”積荷”は?」
ジョディ「言われたとおり、業者に小銭を握らせて外へ運び出したわ」
チェシャ「やった~、それじゃあ明日には出発だね~ しょーぐんさんにばれちゃう前に売り捌かないと」
ジョディ「原価0の帝国の物資ね…いくら儲かるかしら」

チェシャは机に座る男に視線を向ける
チェシャ「で、どう?おじちゃん 帳簿の転記できそう?」
声をかけられ、背中をびくつかせるアーセラン
彼は海賊のアジトで捕虜になっていたところに現れたチェシャに助けられ、秘書のような仕事を任されていた
本来なら口封じのために殺されるところであったが、彼が「会計も交渉も、商人としてのスキルはなんでもある だから助けてくれ」と懇願したのだ。実際、彼はヴァレンウッドで肉を売る商人であった
命拾いしたアーセランだが、再び窮地へと追い込まれていた

アーセラン「あ、ああ、仕組みは大体わかった。これならなんとかできそう…だ…」
会計の知識に自信がなかったわけではない、しかし、チェシャから渡された帳簿は彼の知っているものとは大きく異なっていたのだ
アーセラン「(シロディールで見た帝国人もこんなものは持ってなかった…こいつ一体どこの商人なんだ…?)」
商人として興味深い代物であったが、じっくりと考察している時間は彼にはない 今すぐにこの帳簿の謎を解明し、与えられた仕事を果たさねばならないのだ
チェシャ「よかった~、じゃあ明日までにお願いね~」
アーセラン「お、おう まかしとけ (クソッ、少し時間をくれというべきだったか…しかし、”使えない”と思われたらその場で撃たれるかもしれない…こいつはそういうヤツだ…)」

アーセラン「(とにかく…やるしかねえ… 期限は明日まで、まだ時間は残ってる!)」
机に対して正面に向き合ったアーセラン 彼は文字通り命を賭けて事務仕事に勤しむのであった

チェシャ「おじちゃんが商人さんで助かったよ~ チェシャ、こっちに来てから毎日一人で作業してたんだよ~」
ジョディ「無駄に買い物するから書くことが増えるんじゃないの」
チェシャ「ジョディさんも勉強してくれたらもっと助かるのにな~」
ジョディ「なんでそうなるのよ」


ジョディ「大体ね、私はアンタの部下になる気はないし、これ以上無理に付き合う気もないの 積荷を売り捌いて儲け分を貰うまでの関係だからね」
チェシャ「チェシャ、働かない人にお給料なんかあげないもん!」
ジョディ「やることはちゃんとやってるでしょ!私がいなかったらあの”積荷”だって安全な場所に隠せなかったのよ?それに、アンタの指示で何人ぶち殺してきたと思ってんのよ」
チェシャ「お金の管理の方がもっと大事だもん!!」
アーセラン「(うるせええええええええ)」

ジョディ「じゃあ、あのエルフみたいなやつらをたくさん雇うことね」
チェシャ「いつかはそうするもん! そうなったらジョディさんなんかクビにしちゃうもんね~」
ジョディ「その前にこっちから辞めてやるわよ いつ気まぐれに殺されるかわかったもんじゃないわ」
チェシャ「チェシャは気まぐれで人を撃ったりしないもん!撃つのは邪魔な人と使えない人だけだもん!」
アーセラン「(あ、やっぱり使えないと思われたら殺されるのか…)」
ジョディとアーセランは同時にため息を漏らしたが、彼らの不安は別々のところにあるのであった

騒がしい宿屋の一室とは反対に、ドール城の会議室には静かな時間が流れていた
ガシャンという金属音と共に大柄な女が将軍の下へと歩み寄る
ベアトリクス「話は終わったわ」
テュリウス将軍「うむ、どうだったかね」
ベアトリクス「首長はチェシャ・マリティーナの市民としての活躍に感動、期待されている様子だったわ 彼女を自由に行動させるように、と」
彼女は宮殿での会話をありのまま報告した
それに対して将軍は顔をしかめる
テュリウス「…やはりか」
ベアトリクス「彼女を外に出すのは不安?」
テュリウス「今のところは帝国に害する行動はしていないが…危険ではある しかし、首長の意思は尊重する 我々としても小娘一人をいつまでも監視し続けられるほど暇ではないからな」
特使「ウルフリックが再び動き出している しばらく大人しくしていたが、どうやら休憩は終わりのようだ」

テュリウス「君も明日には部隊を率いて出発してもらうことになるだろう 準備してくれ」
ベアトリクス「わかったわ その前に一ついいかしら?将軍」
テュリウス「なんだね?」
ベアトリクス「彼女の監視は引き続き、続けた方がいいわ」
その言葉を聞いて、将軍は意表を突かれたといった顔になった

テュリウス「君はあの娘を贔屓していたんじゃなかったのか?」
ベアトリクス「少なくとも、帝国万歳としかしゃべれないここの兵士よりは気に入っていたつもりよ しかし、彼女はこの内戦にもきっと介入してくる」
テュリウス「なるほど、我々に有利になるように働きかけるなら利用するまでだが、もし泥沼に引きずり込む気であれば…」
ベアトリクス「私にとって不利益な事態を引き起こすようであれば容赦無く斬る だから、引き続き見張っていて欲しい」
将軍は傍に立っていた特使と顔を見合わせ、少し考えてから口を開いた
テュリウス「わかった 彼女が君の剣の錆にならないことを祈ろう」

場所は変わり、ここはホワイトラン
ドラゴンズブリッジではここ数日銀色の鎧を着込んだ兵士が頻繁に出入りしていた
対ドラゴン部隊に配属された度葉琴とテスラである
彼女たちはその部隊名通り、ドラゴンの討伐が主な任務であるが、目撃情報がない今は雑用部隊として執政や首長の”お使い”に使われてしまっているのであった
そんなわけで、今日も執政のプロベンタスの仕事に付き合わされる2人は、不満をこぼしつつも報告を行った

度葉琴「チェシャちゃんはファルクリースで商売をした後、帝国軍の人とソリチュードへ向かったそうです」
テスラ「山賊から砦を取り返したり、海賊をやっつけたりしてるんだって 今の私たちより真面目に仕事してるよね」
プロベンタス「ふむ、やはり帝国についたか…しかし、帝国側としか取引をしないというタイプでもないらしい…いずれはホワイトランに戻ってくるはずだ」
彼は資料を片手にブツブツと呟きながら椅子に腰掛けた
チェシャの行動を記録したものであった

2人は前々から思っていた疑問を彼に呈した
テスラ「プロベンタスさん、ホワイトランにたくさんモノやお金が入ってくるように商人さんを呼び寄せてるのはわかるんだけど、どうして最近はチェシャちゃんのことばかり調べてるの?」
それを聞いた執政は呆れたといった表情を浮かべながら口を開いた
プロベンタス「お前たちは彼女が何者かも知らずに今まで調べてたのか…いいか?マリティーナって言えばシロディールでは有名な商人の家系だ 彼女をホワイトランが囲い込めばチェシャ・マリティーナだけじゃない、奴らとつながりを持った帝国商人共が街にやってくるってわけさ 他の奴らを追いかけるよりもお得なんだよ」


二人は驚愕の表情を浮かべた
度葉琴「えぇ~!じゃあ、チェシャちゃんはお金持ちの家のお嬢様だったんですか!?」
テスラ「そんな子が一人で旅してたんだ…確かにお金はたくさんあるって言ってたけど…」
プロベンタス「そんなわけで彼女には是非ともこの街を商売の拠点にしてもらいたいが、少し目を放した隙に出て行ったからな。どこにいるかがわからなければ囲い込みも糞も無い。だから行方を追いかけていたわけだ」
テスラ「なるほど、チェシャちゃんじゃなくてそのマリティーナっていうお家の力がすごいんだ」
プロベンタス「インペリアル式簿記や為替手形、海上保険、共同出資、株式 これらは皆この一族が提案、発明したものだ 私も若い頃は彼らの本を読んで勉強したものだ(結局難しくてよくわかんなかったけどな」
度葉琴「???…よくわからないけどすごいですね」

プロベンタス「さぁ、授業は終わりだ。ホワイトランが彼女を上手く利用するために、引き続き行方を追ってくれ 例の計画も順調そうだしな」
テスラ「…?例の計画??」
プロベンタス「…全く、最近兵士や炭鉱夫が忙しそうにしてるのを見てないのか」
テスラ「あぁ、確かに」
プロベンタス「領内で新しい鉱山が見つかったんだよ 今はその調査中だ そろそろ報告が上がってくるだろう…」
彼が仕事に戻ろうとしたときであった
何者かが階段を駆け上がる音が聞こえたかと思うと、いつの間にか3人の傍に佇んでいた
皆の視線がそこへ集まる

アオイ「報告~、鉱山の調査結果が出たよ」
プロベンタス「待ってたぞ、中身はなんだ 鉄か?銀か?それともただの石ころか?」
若干興奮した様子で彼は尋ねた 彼にとっては緊張の一瞬であったことだろう
アオイ「それがね、聞いてビックリ」

アオイ「黒檀が出たんだってさ」
プロベンタス「な、ナニィィィィィ!!!!」
次回、ホワイトランで鉱山開発
商人はこの利権争いに参入できるのか?
スペシャルサンクス
アーセランさん(Kuromimi様)
ベアトリクスさん(廃人a様)
テスラさん(RoundRovin様)
度葉琴さん(みかんジュース様)
アオイさん(くのいち好き様)
スカイリム行商記:第28話 手紙の中身は…
Category: ろーるぷれい日記
お盆で暇なので更新です
先週はTESオフ会に参加させていただきました スカイリムプレイヤーの皆様から色々なお話を聞けてとても楽しかったです
次回があれば是非参加したいですね~

ジョディが釈放されてから早数日が経過した
山賊に占拠された砦は無事に奪還され、帝国の兵士が既に入城していた
内戦やドラゴンによる被害の少ない首都では一番の脅威は街の周辺に潜伏する山賊である
これでソリチュードとその周辺の市民も以前より安心に生活できるというものだ
そんな中、チェシャは相変わらず宿屋であるウィンキング・スキーヴァーの一室で、のんびりとした日々を送っていた
やることといえば市場を適当にぶらついたり、ドール城の兵士たちと会話したり、帳簿の転記をすることくらいであった
しかし、今日は珍しい人物が顔を見せた 以前彼女が故郷への手紙を託した配達人であった シロディールにいる家族の元へと手紙を無事に届いたようだ 手紙の返事がやってきたことを知ったチェシャは素直に喜んだ
男は手紙を渡し、駄賃を受け取ると静かに去って行った

早速開封して内容を確認するチェシャに対して後ろから声がかかった
ジョディ「帳簿遊びの次はお手紙?一体いつになったらお仕事してくれるのかしらね~」
”同居人”は気だるげな様子でベッドに横たわったまま首だけをチェシャのもとへと向けていた
チェシャ「チェシャ遊んでなんかないもん!お買い物も帳簿もお手紙も、ちゃんとお仕事に関係あることだもん!」
ジョディ「はいはい、商人さんは毎日毎日大変ですね~」

ジョディ「でもさ、一番肝心なお仕事には手を付けないのはなんでかな~って雇われの私は思うわけよ 折角、海賊どもの根城がわかったのよ?アイツらに痛い目に遇わされた私としてはさっさとぶっ殺しにいきたいのよね~」

山賊の砦にあった手紙にはブラックブラッド略奪団と思わしきゴロツキとのやりとりが記載されていた
彼らはソリチュード周辺の山賊、海賊たちとある程度のコミュニティを築き、情報や資源の交換を行っていたのだ
これは逆にいえばブラックブラッド団もまたソリチュードの付近に拠点を構えていることを意味する 首都周辺で海賊が巣を構えることのできる沿岸部は場所が大きく限られる
ジョディはチェシャがのんびり首都での生活を送る間に一人で情報を集め、そしてついに奴らのアジトを発見したのだ
しかし、チェシャは敵拠点に乗り込むどころか、帝国軍に報告すらしようとしない
ジョディからすれば、復讐の機会を目の前にして生殺しにされているような状態である

ジョディ「でもまぁこうしてのんびりベッドで寝てるだけで給料が入ってくるわけだし、何もしないっていうのも悪くないんだけどさ そろそろ動いてくれてもいいんじゃないの?」
チェシャ「……」
後ろから聞こえる愚痴を無視しつつ、チェシャは手紙を読み進めていく
そして、最後の一文まで目を通すと口を開いた
チェシャ「…ジョディさん、海賊退治に行きたいの?」
ジョディ「さっきからそう言ってるでしょ」
チェシャ「じゃあ、いっちゃおうか 今日」
ジョディ「え、今日(ry」
チェシャ「さぁさぁ、早く立って! 折角だしこの前捕まえた山賊さんも使っちゃおうよ!」
チェシャは出発の準備を始めながら無理やりジョディを起こすのであった

場所は変わり、ここはブラックブラッド略奪団が拠点にする洞窟
そこには日の光の届かぬ空間が広がっており、じめじめとした空気とカビの匂いが辺りに充満していた
そんな不衛生な環境の場所に何隻かの小船が入ってきた
そのうちの一つが洞窟内に建てられた簡素なドックに横付けにされる

男たちは積荷である拘束された3人の男女を運び出す
彼らは洒落た服装に身を包み、さしたる抵抗を見せることなく洞窟の最深部へと連行されていった
どうやら腕の立つ冒険者ではないようだ
略奪団の男「おい、そこのウッドエルフ。次はお前だ」

アーセラン「(ち、畜生…なんでこんなことに…)」
そして、この拘束された捕虜の中には不運なエルフの男が一人紛れ込んでいた
名はアーセラン。彼はヴァレンウッド出身のボズマーの商人である
商人と呼ばれる人々一般に言えることだが、彼らは無法地帯と化したスカイリムに大きなビジネスチャンスが眠っていることには気づいており、リスクを恐れない人々はこの厳しい北方の地で一攫千金を手に入れることを夢見るものだ
しかし、そうして意気揚々とやってきた商人のほとんどは今拘束されている彼のように山賊や海賊に襲われて無残に殺されるか、全ての財産を奪われて野たれ死ぬかのどちらかの道をたどることになる
アーセランもまた、故郷ヴァレンウッドからシロディールへ移り、スカイリム行きの船へと乗り込んだのだ
そう、あのアイスランナー号に
船は港に到着することなく浜辺に座礁し、気がついたときには海賊に拉致されてしまっていた

ジャリーラ「生き残りは帝国商人とその妻、あとは旅人のボズマーか あの馬鹿共殺りすぎだ」
男「でもよお、アイツ一人でも身代金はスゲー額になるんじゃねえのか?こりゃあ、久々に輸入物のスクゥーマで一発決キメられそうだぜ」
ジャリーラは男の頭の悪い話に苛立たされながら今後のことを考えていた
帝国の商人とその積荷を確保したものの、回収に向かわせた人員の半分がアジトに帰還することはなかった ジャリーラの義理の妹もだ
どうやら口封じのために殺すつもりだったジョディに返り討ちにされたらしいことをジャリーラは悟った
お陰で略奪団の規模も縮小し、アイスランナー号襲撃前よりも組織が弱体化してしまったのだ
ジャリーラ「余計なイレギュラーに仕事を頼むべきではなかったな…」
身代金の要求だけではなく、略奪団の人員の補充もどこかで行わなければならない
予想外の被害によって頭を悩ませられることになったジャリーラであった

団長「おい、ジャリーラ!聞こえねえのか!何ぼさっとしてやがるんだ」
不意に後ろから怒号が響いた
彼がはっと我に返ると辺りにいた海賊たちが慌しく動き出していた
ジャリーラ「どうした?何があった?」
団長「山賊だ!身の程知らずの糞野郎どもが襲ってきやがったッ!」

ジャリーラ「山賊!?この辺りの奴らか?」
団長「そんなこと知るか!大方俺たちが”積荷”を手に入れたことを知って襲ってきやがったんだ わかったらさっさとぶち殺しにいって来い!」

山賊「うおおおおおおお!!」
突然現れた山賊は狂ったかのように絶叫し、目の前の海賊たちを切り刻んでいく
その様子に思わず怯んでしまう男たち
ついに最深部まで侵入を許し、床に大量に撒き散らされる血を敵の血で塗り返す苛烈な白兵戦が始まった

団長「クソッ!クソォッ! なんだこいつら、どこから沸いてきやがった!?」
戦力の一部を先の戦いで失い、積荷の運搬に人手を集めていた隙を狙ったかのような襲撃
しかし、襲ってきたのはただの山賊で実力自体も大したことなければ統率が取れているようにも思えない
ジャリーラ「…誰の命令で動いているんだ?」

そのときであった
何かが風を切るような鋭い音が一瞬聞こえたかと思うと、ジャリーラたちの隣にいた海賊は声を上げることもなく血を噴出して倒れた

同時に音もなく忍び寄る人影が2人に迫る

そして団長の男もその自慢の大剣を振りかざす機会を与えられぬまま下へと落とされた
そう、彼らが山賊に注意を引かれていた時点で決着は着いていたのだ

ジョディはついに因縁の男と数週間ぶりに再会し、互いに武器を構えたまま対峙する
ジョディ「久しぶりね あの時の借りをたっぷり返しに来たわよ」
ジャリーラ「お前…お前かっ!お前があの山賊どもをけしかけたのか!」
ジョディ「残念だけど、私にそんな力があればアンタなんかに嵌められることはなかったでしょうね これは私の雇い主の指示よ」
ジャリーラ「雇い主だと?まさか帝国か!?」
ジョディ「そんなこと知ってどうするのよ アンタもうすぐソブンガルデにいくんでしょうが」

ジョディ「冥土の土産も持たずにさっさとくたばれッ!トカゲ野郎ッ!」
ジョディは吐き捨てるようにそう叫ぶと、憎き相手に向かってその獲物を振りかざした

その頃、アーセランたちは洞窟の物置に積荷と一緒に連れて行かれ、泥と埃にまみれた床に座らされた
付近には見張りの男が立っており、拘束された身では脱出も適わない
そんな時、不意に男共の叫び声が聞こえたかと思うと、金属同士がぶつかり合う音や何かが水へと落下する音などが入り混じって聞こえてきた
男「うるせえな~全くよ~」

男「ぎゃふっ!」
次の瞬間、男の胸に何かが突き刺さり、海賊はそのままピクリとも動かなくなった

目隠しをされているアーセランたちには何が起こっているのか理解できない
アーセラン「な、なんだぁっ!?」
ガシャンという機械音と共に足音がゆっくり近づいてくる

チェシャ「あったあった~積荷だ~」
気の抜けた声の主が彼らの目隠しをはずすと、そこには軽装に身を包み、弩を構えたチェシャの姿があった
アーセラン「あ、あんた、助けに来てくれたのか?」
帝国商人「おお、神への祈りが通じたか 危うくこの汚らしいやつらの巣窟で一生を終えるところだったよ」
3人が安堵の表情を浮かべチェシャを見つめた チェシャはその視線を受けながらまじまじと捕虜の顔を確認する

チェシャ「えーと、インペリアルのプラウティス・カーヴェインさんとサロニア・カーヴェインさんだよね」
帝国商人「ああ、間違いない 私の名を知っているということは本国の人間かね?」
チェシャ「チェシャはママのお使いで来たの~ お手紙に2人を探してくれって書いてあったんだよ」
帝国商人「おお、なんという聡明なお母上だ お名前を聞かせてくれないか。是非あとで礼を言いたい」

チェシャ「うん、チェシャのママはね ”ルシファー・マリティーナ”(Lucifer・Martina)っていうの」
その名を2人が聞いたとき、それまでこの場を包んでいた安堵感、希望といった雰囲気が全て失われた
夫婦二人の顔がぐにゃりと大きく歪む
帝国商人「…今、ルシファーって……」
チェシャ「うん、言ったよ」

男が命乞いの言葉を述べようとしたときにはもう遅かった
既に弩にセットされたボルトが彼の頭蓋に深々と突き刺さっていたのだ
チェシャはそのまま次弾を再装填し、夫人であるサロニアにも矢を向けた


構えてから引き金を引くまでに一切の躊躇いはなかった
アーセランは横からその凄惨たる光景をただ呆然と眺めるしかなかった
彼には一体何が起こっているのかすら理解できなかった

瞬く間に彼女の手によって3つの死体が出来上がった
アーセランは震える声で尋ねる
アーセラン「アンタ…何やって……助けに来たんじゃ」
チェシャ「チェシャはママのお使いで来たの~ カーヴェインっていう商人が船に乗ってるはずだから見つけ次第やっつけろって手紙に書いてあったの~」
アーセラン「同じ帝国人じゃ…」
チェシャ「このおじちゃんたちはママの商売を邪魔する悪い商人さんなんだ~だからチェシャがママの代わりにやっつけてあげたの」


チェシャ「ついでに悪い海賊さんもやっつけるつもりだったから手間が省けてよかったよかった☆」

チェシャ「前に捕まえてた山賊さんも『この洞窟の人たち皆やっつけたら自由にしてあげる』って言ったら皆必死で頑張ってくれたの♪ 上手く皆死んでくれてチェシャは大助かりだよ~」

チェシャ「ついでに積荷も無事に手に入ったし、チェシャ大満足♪」
興奮した様子でチェシャは早口に自らの計画を目の前のボズマーに向かって話していた
3人も人を撃ち殺した影響なのか、ひどく気分が高揚しているようだった
徐に松明を取り出し、チェシャは話を続ける
チェシャ「あ、そうだ 死体が見つかると面倒だって手紙に書いてあったんだった」

チェシャ「それ~☆」
そのまま火の灯った松明は彼女の手を離れ、目の前に転がる死体に燃え移ると、悪臭を放ちながらその皮を焼き尽くしていった
チェシャ「これでよーし」
二転三転する状況の中でアーセランは混乱しながらも一つ確かな確信を抱いた
アーセラン「(もしかして…)」

アーセラン「(俺、未だにピンチ……?)」
次回 ボズマー商人の運命や如何に
スペシャルサンクス
アーセランさん(Kuromimi様)
先週はTESオフ会に参加させていただきました スカイリムプレイヤーの皆様から色々なお話を聞けてとても楽しかったです
次回があれば是非参加したいですね~

ジョディが釈放されてから早数日が経過した
山賊に占拠された砦は無事に奪還され、帝国の兵士が既に入城していた
内戦やドラゴンによる被害の少ない首都では一番の脅威は街の周辺に潜伏する山賊である
これでソリチュードとその周辺の市民も以前より安心に生活できるというものだ
そんな中、チェシャは相変わらず宿屋であるウィンキング・スキーヴァーの一室で、のんびりとした日々を送っていた
やることといえば市場を適当にぶらついたり、ドール城の兵士たちと会話したり、帳簿の転記をすることくらいであった
しかし、今日は珍しい人物が顔を見せた 以前彼女が故郷への手紙を託した配達人であった シロディールにいる家族の元へと手紙を無事に届いたようだ 手紙の返事がやってきたことを知ったチェシャは素直に喜んだ
男は手紙を渡し、駄賃を受け取ると静かに去って行った

早速開封して内容を確認するチェシャに対して後ろから声がかかった
ジョディ「帳簿遊びの次はお手紙?一体いつになったらお仕事してくれるのかしらね~」
”同居人”は気だるげな様子でベッドに横たわったまま首だけをチェシャのもとへと向けていた
チェシャ「チェシャ遊んでなんかないもん!お買い物も帳簿もお手紙も、ちゃんとお仕事に関係あることだもん!」
ジョディ「はいはい、商人さんは毎日毎日大変ですね~」

ジョディ「でもさ、一番肝心なお仕事には手を付けないのはなんでかな~って雇われの私は思うわけよ 折角、海賊どもの根城がわかったのよ?アイツらに痛い目に遇わされた私としてはさっさとぶっ殺しにいきたいのよね~」

山賊の砦にあった手紙にはブラックブラッド略奪団と思わしきゴロツキとのやりとりが記載されていた
彼らはソリチュード周辺の山賊、海賊たちとある程度のコミュニティを築き、情報や資源の交換を行っていたのだ
これは逆にいえばブラックブラッド団もまたソリチュードの付近に拠点を構えていることを意味する 首都周辺で海賊が巣を構えることのできる沿岸部は場所が大きく限られる
ジョディはチェシャがのんびり首都での生活を送る間に一人で情報を集め、そしてついに奴らのアジトを発見したのだ
しかし、チェシャは敵拠点に乗り込むどころか、帝国軍に報告すらしようとしない
ジョディからすれば、復讐の機会を目の前にして生殺しにされているような状態である

ジョディ「でもまぁこうしてのんびりベッドで寝てるだけで給料が入ってくるわけだし、何もしないっていうのも悪くないんだけどさ そろそろ動いてくれてもいいんじゃないの?」
チェシャ「……」
後ろから聞こえる愚痴を無視しつつ、チェシャは手紙を読み進めていく
そして、最後の一文まで目を通すと口を開いた
チェシャ「…ジョディさん、海賊退治に行きたいの?」
ジョディ「さっきからそう言ってるでしょ」
チェシャ「じゃあ、いっちゃおうか 今日」
ジョディ「え、今日(ry」
チェシャ「さぁさぁ、早く立って! 折角だしこの前捕まえた山賊さんも使っちゃおうよ!」
チェシャは出発の準備を始めながら無理やりジョディを起こすのであった

場所は変わり、ここはブラックブラッド略奪団が拠点にする洞窟
そこには日の光の届かぬ空間が広がっており、じめじめとした空気とカビの匂いが辺りに充満していた
そんな不衛生な環境の場所に何隻かの小船が入ってきた
そのうちの一つが洞窟内に建てられた簡素なドックに横付けにされる

男たちは積荷である拘束された3人の男女を運び出す
彼らは洒落た服装に身を包み、さしたる抵抗を見せることなく洞窟の最深部へと連行されていった
どうやら腕の立つ冒険者ではないようだ
略奪団の男「おい、そこのウッドエルフ。次はお前だ」

アーセラン「(ち、畜生…なんでこんなことに…)」
そして、この拘束された捕虜の中には不運なエルフの男が一人紛れ込んでいた
名はアーセラン。彼はヴァレンウッド出身のボズマーの商人である
商人と呼ばれる人々一般に言えることだが、彼らは無法地帯と化したスカイリムに大きなビジネスチャンスが眠っていることには気づいており、リスクを恐れない人々はこの厳しい北方の地で一攫千金を手に入れることを夢見るものだ
しかし、そうして意気揚々とやってきた商人のほとんどは今拘束されている彼のように山賊や海賊に襲われて無残に殺されるか、全ての財産を奪われて野たれ死ぬかのどちらかの道をたどることになる
アーセランもまた、故郷ヴァレンウッドからシロディールへ移り、スカイリム行きの船へと乗り込んだのだ
そう、あのアイスランナー号に
船は港に到着することなく浜辺に座礁し、気がついたときには海賊に拉致されてしまっていた

ジャリーラ「生き残りは帝国商人とその妻、あとは旅人のボズマーか あの馬鹿共殺りすぎだ」
男「でもよお、アイツ一人でも身代金はスゲー額になるんじゃねえのか?こりゃあ、久々に輸入物のスクゥーマで一発決キメられそうだぜ」
ジャリーラは男の頭の悪い話に苛立たされながら今後のことを考えていた
帝国の商人とその積荷を確保したものの、回収に向かわせた人員の半分がアジトに帰還することはなかった ジャリーラの義理の妹もだ
どうやら口封じのために殺すつもりだったジョディに返り討ちにされたらしいことをジャリーラは悟った
お陰で略奪団の規模も縮小し、アイスランナー号襲撃前よりも組織が弱体化してしまったのだ
ジャリーラ「余計なイレギュラーに仕事を頼むべきではなかったな…」
身代金の要求だけではなく、略奪団の人員の補充もどこかで行わなければならない
予想外の被害によって頭を悩ませられることになったジャリーラであった

団長「おい、ジャリーラ!聞こえねえのか!何ぼさっとしてやがるんだ」
不意に後ろから怒号が響いた
彼がはっと我に返ると辺りにいた海賊たちが慌しく動き出していた
ジャリーラ「どうした?何があった?」
団長「山賊だ!身の程知らずの糞野郎どもが襲ってきやがったッ!」

ジャリーラ「山賊!?この辺りの奴らか?」
団長「そんなこと知るか!大方俺たちが”積荷”を手に入れたことを知って襲ってきやがったんだ わかったらさっさとぶち殺しにいって来い!」

山賊「うおおおおおおお!!」
突然現れた山賊は狂ったかのように絶叫し、目の前の海賊たちを切り刻んでいく
その様子に思わず怯んでしまう男たち
ついに最深部まで侵入を許し、床に大量に撒き散らされる血を敵の血で塗り返す苛烈な白兵戦が始まった

団長「クソッ!クソォッ! なんだこいつら、どこから沸いてきやがった!?」
戦力の一部を先の戦いで失い、積荷の運搬に人手を集めていた隙を狙ったかのような襲撃
しかし、襲ってきたのはただの山賊で実力自体も大したことなければ統率が取れているようにも思えない
ジャリーラ「…誰の命令で動いているんだ?」

そのときであった
何かが風を切るような鋭い音が一瞬聞こえたかと思うと、ジャリーラたちの隣にいた海賊は声を上げることもなく血を噴出して倒れた

同時に音もなく忍び寄る人影が2人に迫る

そして団長の男もその自慢の大剣を振りかざす機会を与えられぬまま下へと落とされた
そう、彼らが山賊に注意を引かれていた時点で決着は着いていたのだ

ジョディはついに因縁の男と数週間ぶりに再会し、互いに武器を構えたまま対峙する
ジョディ「久しぶりね あの時の借りをたっぷり返しに来たわよ」
ジャリーラ「お前…お前かっ!お前があの山賊どもをけしかけたのか!」
ジョディ「残念だけど、私にそんな力があればアンタなんかに嵌められることはなかったでしょうね これは私の雇い主の指示よ」
ジャリーラ「雇い主だと?まさか帝国か!?」
ジョディ「そんなこと知ってどうするのよ アンタもうすぐソブンガルデにいくんでしょうが」

ジョディ「冥土の土産も持たずにさっさとくたばれッ!トカゲ野郎ッ!」
ジョディは吐き捨てるようにそう叫ぶと、憎き相手に向かってその獲物を振りかざした

その頃、アーセランたちは洞窟の物置に積荷と一緒に連れて行かれ、泥と埃にまみれた床に座らされた
付近には見張りの男が立っており、拘束された身では脱出も適わない
そんな時、不意に男共の叫び声が聞こえたかと思うと、金属同士がぶつかり合う音や何かが水へと落下する音などが入り混じって聞こえてきた
男「うるせえな~全くよ~」

男「ぎゃふっ!」
次の瞬間、男の胸に何かが突き刺さり、海賊はそのままピクリとも動かなくなった

目隠しをされているアーセランたちには何が起こっているのか理解できない
アーセラン「な、なんだぁっ!?」
ガシャンという機械音と共に足音がゆっくり近づいてくる

チェシャ「あったあった~積荷だ~」
気の抜けた声の主が彼らの目隠しをはずすと、そこには軽装に身を包み、弩を構えたチェシャの姿があった
アーセラン「あ、あんた、助けに来てくれたのか?」
帝国商人「おお、神への祈りが通じたか 危うくこの汚らしいやつらの巣窟で一生を終えるところだったよ」
3人が安堵の表情を浮かべチェシャを見つめた チェシャはその視線を受けながらまじまじと捕虜の顔を確認する

チェシャ「えーと、インペリアルのプラウティス・カーヴェインさんとサロニア・カーヴェインさんだよね」
帝国商人「ああ、間違いない 私の名を知っているということは本国の人間かね?」
チェシャ「チェシャはママのお使いで来たの~ お手紙に2人を探してくれって書いてあったんだよ」
帝国商人「おお、なんという聡明なお母上だ お名前を聞かせてくれないか。是非あとで礼を言いたい」

チェシャ「うん、チェシャのママはね ”ルシファー・マリティーナ”(Lucifer・Martina)っていうの」
その名を2人が聞いたとき、それまでこの場を包んでいた安堵感、希望といった雰囲気が全て失われた
夫婦二人の顔がぐにゃりと大きく歪む
帝国商人「…今、ルシファーって……」
チェシャ「うん、言ったよ」

男が命乞いの言葉を述べようとしたときにはもう遅かった
既に弩にセットされたボルトが彼の頭蓋に深々と突き刺さっていたのだ
チェシャはそのまま次弾を再装填し、夫人であるサロニアにも矢を向けた


構えてから引き金を引くまでに一切の躊躇いはなかった
アーセランは横からその凄惨たる光景をただ呆然と眺めるしかなかった
彼には一体何が起こっているのかすら理解できなかった

瞬く間に彼女の手によって3つの死体が出来上がった
アーセランは震える声で尋ねる
アーセラン「アンタ…何やって……助けに来たんじゃ」
チェシャ「チェシャはママのお使いで来たの~ カーヴェインっていう商人が船に乗ってるはずだから見つけ次第やっつけろって手紙に書いてあったの~」
アーセラン「同じ帝国人じゃ…」
チェシャ「このおじちゃんたちはママの商売を邪魔する悪い商人さんなんだ~だからチェシャがママの代わりにやっつけてあげたの」


チェシャ「ついでに悪い海賊さんもやっつけるつもりだったから手間が省けてよかったよかった☆」

チェシャ「前に捕まえてた山賊さんも『この洞窟の人たち皆やっつけたら自由にしてあげる』って言ったら皆必死で頑張ってくれたの♪ 上手く皆死んでくれてチェシャは大助かりだよ~」

チェシャ「ついでに積荷も無事に手に入ったし、チェシャ大満足♪」
興奮した様子でチェシャは早口に自らの計画を目の前のボズマーに向かって話していた
3人も人を撃ち殺した影響なのか、ひどく気分が高揚しているようだった
徐に松明を取り出し、チェシャは話を続ける
チェシャ「あ、そうだ 死体が見つかると面倒だって手紙に書いてあったんだった」

チェシャ「それ~☆」
そのまま火の灯った松明は彼女の手を離れ、目の前に転がる死体に燃え移ると、悪臭を放ちながらその皮を焼き尽くしていった
チェシャ「これでよーし」
二転三転する状況の中でアーセランは混乱しながらも一つ確かな確信を抱いた
アーセラン「(もしかして…)」

アーセラン「(俺、未だにピンチ……?)」
次回 ボズマー商人の運命や如何に
スペシャルサンクス
アーセランさん(Kuromimi様)
スカイリム行商記:第27話 奇妙な共闘
Category: ろーるぷれい日記
更新が遅れてしまいました
ようやく用事が片付いたので、短めですが27話投稿します~


スカイリムでも更に最北端の地ではオーロラが夜空を照らし、幻想的な風景を見せる
それは過酷な環境の中での数少ない癒しといってもいい
できることならこの美しい景色を優雅に眺めながら夜を過ごしたいところだが、ここは山賊の占拠する砦である
手に持っているスコープも天体観測のためのものではなく、偵察用である

ジョディ「正面に1人…側面を巡回する見張りが2人…」

ジョディ「全く、なんで私がこんなことしなきゃいけないのよ」
ブツブツと文句を漏らしつつも、標的となる砦の様子を注意深く観察する
事前の情報で山賊の規模は大したことはないのは知っていたが、できれば1人ずつ確実に始末できるルートを選択したいものだ
まだ傷が完全に完治しておらず、無理はできない状態ならなおさらである
すると、後ろから気の抜けた声が聞こえる
チェシャ「まーまー、いーじゃん おかげで牢屋から出られたんだしさー」

囚われの身になっていたジョディが開放された翌日、チェシャはドール城へと呼び出された
勝手に囚人を釈放させたのだから当然といえば当然である
チェシャ「チェシャが海賊さんを牢屋から出してあげたら、しょーぐんさんにすごい怒られちゃって」


チェシャ「『囚人から情報を聞き出す前に開放するなんて一体何を考えてるんだ!』ってしょーぐんさん言ったの チェシャは『ごーもんして聞き出すより、許してあげて協力してもらった方が時間がかからなくていいよ』って言ったんだけど全然聞いてくれなくて、結局海賊さんをまた牢屋に入れることになっちゃいそうだったんだけど」

チェシャ「そしたらね、チェシャのお友達の隊長さんが『帝国軍にそれ相応の恩恵があれば、囚人を解放しても構わないでしょう』って言ってくれてね」

チェシャ「この砦から山賊さん追い出したら許してくれることになったんだよ~」
ジョディ「その話はもう聞いたわよ それよりも…」

ジョディ「なんでアンタまでついて来てんのよ」
チェシャ「だって、一人で行かせたら海賊さん逃げちゃうかもしれないじゃん 海賊さんには今後もチェシャのためにバリバリ働いてもらうよ~」
そういうわけで、山賊の砦をたった2人で制圧することになったのだ
さも当然のごとく拒否権のないジョディはため息しか出ないのであった

ジョディ「まさか、帝国のために働く日が来るとはね…」
一通りの偵察を済ませ、砦への潜入を開始するジョディ
チェシャをその場に待機させ、低い姿勢のまますばやく移動していく


見張りを掻い潜り、防壁をよじ登り



背後から1人ずつ始末し、確実に数を減らしていく

砦の中で休憩中だった山賊まで殺し尽くすと、ジョディはようやく一息ついた
山賊は小規模かつ実力も素人に毛が生えた程度のものであり、幸い負傷することはなかった
ジョディ「全く、こんなことするくらいなら早くあのトカゲ野郎を探し出して首を…」
その時、机に何か置かれていることに気づいた

ジョディ「手紙…?山賊が?」
内容が気になったが、ひとまずあの世間知らずの雇い主への報告が先だ
手紙を回収し、外で待機しているはずのチェシャの元へとジョディは向かった

外に出ると異様な光景が彼女の視界に入った
チェシャ「おら~、こっちはくろすぼーがあるんだぞ~ チェシャに逆らうとどうなるか思い知ったか~!」
山賊「はいっ、すいませんでしたっ」
チェシャ「変な動きしたら撃っちゃうからね~」


ジョディ「アンタ、なにやってんの…?」
チェシャ「暇だったから、見張りの山賊さん捕まえちゃった 武器も全部没収したよ~」
そう言うと、無邪気な笑顔を浮かべながら山賊に弩を突きつけるチェシャなのであった
ジョディ「……やれやれ」

翌日
チェシャ「………というわけで、山賊さんはやっつけたから、あの海賊さんはチェシャのものだね」
テュリウス「…まぁ約束は約束だ こちらとしても邪魔な山賊を掃除する手間が省けたし、釈放を認めよう」

チェシャ「ところで、山賊さんを捕まえたんだけど誰か買ってくれる人知らない?」
テュリウス「軍人の目の前で人身売買の話をするんじゃない!」
こうして、説教を受けながらもジョディの釈放を認めさせることに成功したチェシャは、彼女と協力して海賊と積荷の行方を追うことになった
次回、商人はついにジャ・リーラを追う
スペシャルサンクス:廃人a様 (ベアトリクスさん)
今回もありがとうございます
スカイリム行商記:第26話 捨てる神、拾う神
Category: ろーるぷれい日記
最近、いいペースで更新できている気がします
物語がゆったり進んでいるので、本来はこの調子を維持しないといけないのですが、中々難しいです(MGS発売までは別ゲーは控えよう


難破したアイスランナー号を救助しに向かった日から数日が経過した
ここはソリチュードの宿屋、ウィンキング・スキーヴァ-の一室
チェシャは机に広げた帳簿と便箋を目の前にしてうんうんと唸り続けていた
チェシャ「うーんと、えーっと、おうちの住所書いて……お手紙ってこんな感じかな…??」

チェシャ「ええと……『無事にしょーぐんさんに会えました』っと……………お船の名前は…”あいすらんなー号”でいいんだよね? よし、できた!」

一時間かけて完成した手紙を配達人のところへ早速届けるチェシャ
目的の一つであるテュリウス将軍との接触を済ませたため、家族にその報告をする必要があったのだ

チェシャ「インペリアルシティのフィリックス・マリティーナに届けてくださーい♪」
配達人「あいよ 確かに受け取った」

その後、ベアトリクスと合流した
ソリチュードに来てからというものの、チェシャの興味を引くような儲け話は耳に入って来なかった
ホワイトランから運んできた商品は売りさばいてしまったため、他にやることも無く彼女の公務に同行し続けることにしたのだ
ベアトリクスもまた、一般人であるチェシャがついて来る事を止めることはしなかった
ベアトリクス「おはよう商人さん、さっきの手紙は?」
チェシャ「おはよう隊長さん、パパとママに手紙書いたんだ~ チェシャが頑張ってることをちゃんと報告しないといけないの」

チェシャ「…ところで、ピンクのトカゲさんまだ見つからないの~?」
ベアトリクス「ええ、帝国から来た商人の行方も、積荷がどこへ運ばれたのもわかってないそうよ 捜索に裂く人員もほとんどないし、このまま見つからないと思うわ」
帝国からやってきた商人は結局海賊たちに捕まってしまったようだ 今頃、監禁されているのか、それとも殺されてしまったか チェシャとしてはライバルが減ってくれて助かるが、貨物の行方は気になっていた 見つけることができたらカネになるかもしれないからだ
チェシャ「ふぅん…」
帝国軍としては真剣に捜索する気は無いようだ 今後もスカイリムのどこかで略奪が行われ続けるのかと思うと良い気はしなかった

ドール城へと向かったチェシャを待っていたのは一時間にも及ぶ説教であった
勝手に捜索隊に同行し、現場を歩き回っていたことが兵士から報告されたのだ
テュリウス「スカイリムが如何に危険な場所かという自覚が足りないようだな……全く最近の若いやつは…」くどくど

チェシャ「はーい、ごめんなさーい」

やっとのことで説教から開放されたチェシャは愚痴をこぼしつつ、ベアトリクスと共に城の地下へと続く階段を下りていく
チェシャ「あんなに怒んなくたっていーじゃんっ! 今回だって、ドロボーさん捕まえたのチェシャなんだよ!チェシャのお手柄なのにっ!」

扉を開けるとかび臭い匂いが鼻腔をくすぐった
石の壁に反響して聞こえるのは囚人の呻き声だろうか ここはソリチュードで罪を犯したものを収容する牢獄である
チェシャ「うぇ~変なにおい」

さらに下へと続く階段を降りていく二人
一人の衛兵が彼女たちを出迎えた
衛兵「ベアトリクス隊長!」
ベアトリクス「お勤めご苦労様、”彼女”は何かしゃべったかしら」

二人は衛兵によってある牢に案内される
そこでは囚人が一人、衛兵たちから尋問という名の暴力を受けていた
あの夜、チェシャによって瀕死のところを発見されたジョディは一命を取り留めたものの、帝国軍に引き渡されたのだ
衛兵「ずっとこの調子ですよ 何をやっても口を割ろうとしない」

衛兵「この女について色々と調べてみましたが、ウィンドヘルムで指名手配されていた海賊のようです 噂じゃ、闇の一党や盗賊ギルドとも繋がりがあるとか…」

ベアトリクス「あのアルゴニアンについては?」
衛兵「ここ数日聞き出そうとしてるのですが、『トカゲ野郎については何も知らない』としか言いません 吐かせるには時間がかかるかと」

壁に磔にされた女の様子をチェシャはじっと見つめていた
拷問をみるのは初めてだったが、特に嫌悪感は抱くことはなく、悪人が罰を受けている程度にしか感じなかった
だが、囚人の女の顔を見てふと思った
チェシャ「(うーん、このドロボーさん、どこかで会ったことあったっけ?)」
どこかで見かけたような気もするが正確に思い出せない

しばらく椅子に座って考え込んでみたが、結局思い出すことはなかった
それにしてもおかしな囚人である あれだけ手酷い拷問を受けて、なぜ黙っているのか 早く仲間の情報を渡して楽になれば良いのに…チェシャは不思議とこの海賊の女に興味を抱いていた
ベアトリクス「どうしたの?」
いつの間にか隣にベアトリクスが座っていた チェシャは素直に疑問をぶつける
チェシャ「なんでこの人知ってること何も言わないの~? ごうもんってとっても痛いんでしょ?」
ベアトリクス「何もしゃべらないのは当然よ」
チェシャ「どうして~?」
ベアトリクス「知っていることを全て話したら、彼女を生かしておく必要はなくなるもの 正直に話しても処刑の日が早まるだけよ」
チェシャ「…そっか~、それもそうだね~」

チェシャは少し考えた後、再び口を開いた
チェシャ「でも、それじゃいつまで経っても情報集まらないよね?」
ベアトリクス「そうね、こうしている間にも 積荷はどこかへ運ばれてしまっているし、商人だって殺されてしまっているかもしれない…私は興味ないけど」
チェシャ「じゃあさ♪こういうのはどう?」
いつものように笑みを浮かべ、チェシャはそっと耳元で囁いた
ベアトリクス「………貴女ってば本当に…変わってるわね」

その夜、再び牢獄を訪れたチェシャ
巡回する衛兵の監視の隙を突いて、囚人と接触を試みる
チェシャ「お、いたいた」

チェシャ「海賊さーん 生きてる~?」
魔法によって発した光をチラチラと彼女の顔にちらつかせ、小声で尋ねる
すると、か細い返事がぶつぶつと聞こえた まだ息はあるようだ
ジョディ「…誰かと思えば…あの時の」

虚ろな表情をこちらへ向けつつジョディはまるで独り言のように呟いていた どうやら肉体的にも精神的にも限界が近いようだ
ジョディ「…全く…アンタに目をつけてからこっちは失敗続きよ……手に入れた金は結局取り返されるし、トカゲには裏切られるし…もううんざり」
やはり、チェシャとこの海賊はどこかで出会っていたようだ その点も詳しく聞きたいところではあったが、時間は限られている
チェシャは看守が来る前に手短に尋ねようと単刀直入に質問する
チェシャ「ねぇねぇ、チェシャ、あのお船の積荷と乗ってた商人さんを探してるんだ 何か知らない?」
ジョディ「だからなにも知らないって言ってるでしょ」
チェシャ「じゃあ、ピンクのトカゲさんは?お友達じゃないの?」
ジョディ「誰が友達よ あのトカゲ…今度見つけたら絶対に八つ裂きにしてその皮を剥いで鞄にしてやる……それまで死んでたまるもんですか……」
チェシャ「……それじゃあさ、チェシャと一緒にトカゲさん探そうよ~!海賊さんはトカゲさんやっつけることができるし、チェシャは探し物が見つかるしでいいことずくめだよ!ねぇねぇ、いいでしょ~??」
ジョディ「…おめでたい頭してるわね この状態を見てそんなことできると思ってるわけ? それともアンタがここから出してくれるのかしら」

チェシャ「うん、チェシャが出してあげる♪ だからチェシャに協力してよ~♪」
チェシャはっきりと応えた 拷問で情報を吐かせるには時間がかかりすぎる それよか、彼女の持っている力と情報を利用して、首謀者であるアルゴニアンを探したほうが良いというのがチェシャの判断であった
ジョディ「…アンタ、本気?」
チェシャ「チェシャはいつも本気だよ~♪」
ジョディ「でも、どうやって…」
チェシャは懐から袋を取り出した
チェシャ「これを使うの! 明日には海賊さんも自由になってると思うよ~じゃあね♪」
そう言うとチェシャは衛兵が巡回に来る前にさっさと退散してしまった
ジョディ「……まだ協力するなんて言ってないんだけど」

次の日、牢獄の拷問部屋にはチェシャの姿があった
無論、ジョディを牢獄から釈放するためだ 躊躇無く看守に話しかける
チェシャ「…そういうわけだから、チェシャにあの囚人さんちょーだい ”ほしゃくきん”も払うからさ~」
看守「駄目に決まってるだろっ!あの女は処刑すると決めてある その前にジャ・リーラとか言うアルゴニアンの情報を吐いてもらうがな」
チェシャ「え~そんな~ どうしてもだめ~?」
看守「しつこいぞ 帰れ、ここはお前さんのようなガキが来るところじゃない」

邪険にあしらわれたチェシャであったが、不敵な笑みを浮かべて再び口を開いた
チェシャ「しょうがないなぁ~ じゃあチェシャ、しょーぐんさんに”実は看守のおじちゃんが囚人を一人逃がしちゃってた”こと教えちゃうもんね~」
看守「な、なぜそれを…ッ!?」
チェシャ「商人には情報源があるんだよ~ 何も用意せずにおじちゃんと交渉なんてするわけ無いじゃん」

看守の弱みは事前に把握していた
巡回していた兵士をカネで釣ったのだ
牢獄の管理は看守の男が担当していること、そして男の弱みを握れば釈放はたやすいとチェシャに教えたのはベアトリクスであった
彼女もまた、「そちらの方が面白そうだから」という理由でチェシャの提案に乗ったのだ

再び、看守と向き合うチェシャ
チェシャ「で、どーするの?」
看守「う、うぐぐ、仕方ない…釈放してやらんこともない……が、必ず、ジャ・リーラを見つけ出してくれるか?」
チェシャ「うん、勿論」
看守「じゃ、じゃあ保釈金を…」
チェシャは返事をすることなく、ただ笑顔で看守の男を見つけ続けた
看守「う、うぐぐ……わかった、保釈金はなしでいい…だから誰にも言うな…」
男は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべ、目の前の少女に屈した
チェシャ「やったぁ、じゃあ早速釈放してあげてよ~」

すると看守は後ろの鉄籠を指差した
看守「ん、気づいてなかったか? 女ならここだ、勝手に持っていけ」
そこには暗がりの中で虫の息となったジョディの姿があった

チェシャ「うわぁ…折角助けてあげたのにまたボロボロだね~」
チェシャは看守から鍵を受けとると、雑に彼女を牢から引きずり出す

チェシャ「ほらほら、約束通り出してあげたよ~ 早く一緒にトカゲさん探そうよ~」
まるで新しいおもちゃを手に入れた幼児のように、生き生きとした表情を浮かべるチェシャであった…
次回、商人は海賊と共闘する…
スペシャルサンクス:廃人a様 (ベアトリクスさん)
今回もありがとうございます